自分探しの長い旅

彼はよく言ってた『人生に暗示を見つけられなければ、人生に打たれる。』って。それは本当よ、見つけられたはずのヒントを私は見つけられなかった。それで私は足を骨折しちゃったの。」

➡「夢の賢者ユング」より

 

個性化は根元的な欲求

個性化は⇒ 空腹・渇き・性・攻撃性・休養・幸福の追求などと同様、人間を動機づけるものの一つである。ユングは、人間は集合的な魂の中にその根を持っていると考えたが、それにもかかわらず➡ そこから自らを分離し、個人が独自に魂を発達させることの重要性を説いた。ユングは繰り返し➡ 意識的になることの重要性と➡ 人格の意識的な面と無意識的な面を統合することの必要を説いた。

 

個性化の旅の物語

旅の物語の一例として、母性の多様な面との対峙と克服があげられる。人間が始めにしなければならないのは、自然的・養育的・保守的・感情的な母性との決別である。神話においては豊穣の女神デメーテルがこれをあらわす。デメーテルは普段は温厚で物静かだが、一旦怒ると人間を飢餓に陥れるという恐ろしい一面を持っている。これは、母との絆が強すぎると人間の発達が妨げられることを暗示している

 

人間が決着をつけなければならない女神のもう一つの側面は、冥界の女王ペルセポネーのような誘惑的で野心的な一面である。野心には

人間を鼓舞し成長させる面と、⇒死や恐怖に追いやる面があり、

母親の野心的なファンタジーは

精神的な成熟への希求をもたらす場合もあり、⇒うぬぼれた破壊的な野心を生み出す場合もある。

 

重要なことは、これら母性的元型が外部にあるのではなく、自らに生来具わったものであると自覚することである。つまり、

これを自分自身の母親だけに見ることや、他の女性や社会システムに投影することが、何の役にも立たないということを知ることである。しかし、

自分の母親を罵ったり、社会に反抗して繰り返し非難することだけでは、何事も達成されないことがわかるまでには、なお大変な心理的努力が必要になるのである。しかも、

これは個性化の過程で習得しなければならない巨大な教訓の一つにすぎないのである

ー結婚の深層、A・グッゲンビュール-クレイグ著/樋口和彦・武田典道訳、創元社より)

幸福と救い

だめだよ。ぼくは孤独になりたいんだ。来年の春、また会おう。」

➡ スナフキン

 

幸福(Well-being)と救い(Salvation)の違い

生理学的に幸福とは⇒ 不快な緊張を避けること(くつろいで愉快な肉体的快適を得ること)すなわち、⇒ 充分な食料自然の驚異からの保護快適と感じる肉体的活動日常的に必要な物質的欲求の満足最低限のプライベートな空間などが満たされること。

感情的には⇒ 集団に属しているという感情ある程度の特権を有しているという気持ち家族やコミュニティとの良い関係が存在することなど。反対に、不幸とは幸福な状態にないことであり、➡ 緊張・不満足、苦痛を伴う感情・不安・憎しみ・困難・解決不能の葛藤、真理に対する強迫的な追及、悪や死と折り合って行かなければならないという感情である。

幸福感に関係あるのはいわゆるハッピーという感情である。」

 

一方、「救い」とは宗教的文脈によって語られる⇒ 救いは単に幸福でくつろいだ、具体的な生存の仕方に関わるものではなく、神との接触を求め、発見することを意味する宗教的概念である。また、哲学においては⇒ 生命や人生の意味に関する探究を語り、キリスト教の概念では⇒ 救いはこの世で(完全に)得られるようなものではないと言われている。罪や死が絶えず私たちを苦しめ、人生に対する問いに満足のいく回答は得られないからである。

 

そして、宗教や哲学が無数に存在するように、個人個人は独自の方法で救済を求め、見出さなければならない。にもかかわらず、全ての道は、ある共通の特徴を持っている。

➡ 「私は苦痛や死との対決を必要としないような道を一つも知らない。」

 

「救い」について人は、正確に定義することも、想像することもできない。ただ、救済論的道筋を知っているだけである。たぶん人間の生涯においては、ほんの瞬間の至高体験によって直観するのみである。日没を見ているとき、俄雨の中に立っているとき、毎年の祝祭の時など、ほんの数分間、人は突然人生の意味が分かったと信じる時がある。

➡ 「すなわち、目的という立場からは、救いと幸福というのはたがいに矛盾することになる。つまり、幸福への道筋には必ずしも苦痛が含まれてはいない。だから、幸福のためにわれわれは、幸せになるように、そしてまた答えのない問いに頭をぶつけないように駆り立てられているのである幸せな人は愛する者たちにまじって家族の食卓につき、たらふく食べる。」

 

➡ 「救いを求める人は神や悪魔や世界と格闘し、そして、死とすら対決するのである。そして、たとえこれらすべてが、特にその瞬間に絶対必要でないにしてもである。」

ー結婚の深層、A・グッゲンビュール-クレイグ著/樋口和彦・武田典道訳、創元社より)

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