比較優位性のほころび: JAPAN繁栄への回帰-9

「JAPAN繁栄への回帰」JAPAN THE RETURN TO PROSPERITY

ラビ・バトラ著、青柳孝直+山田智彦訳、総合法令、1996年より

 

自由貿易を推進する人は、その理由として「比較優位性」をあげる。すべての国は最も生産性が高い産業に特化し、他の製品は輸入すべきであるという。そのような考えから、オーストラリアやカナダは農業・鉱業・漁業の第一次産業に特化し、アメリカは農業とサービス業、日本とドイツは製造業に特化し、各々生産性を高め、世界全体として自由貿易の恩恵に浴しているというのである。

 

しかしこの議論には、その「仮定」に問題がある。この理論は産業間に賃金格差が無いことを仮定しているので、自由貿易によって輸入部門に失業者が発生しても、労働者は輸出部門に就業できることになる。その国に高い生産力があれば、その国の人々は少なくとも長期的には利益を享受できるというのである。

 

しかし現実には産業別に賃金格差がある。もし好況産業より不況産業の賃金が高いということになれば、その国には高賃金産業が低賃金産業にとって代わられるという問題が起きることになる。これは現実に北米・オーストラリア・英国に起きた問題なのである。

 

自由貿易をめぐる第二の問題としては、多国籍企業の自給行為があげられる。現在は世界中に安い輸入品があふれ、低賃金の国に工場建設が進められている。だから生産と雇用は自国から海外へ向けられることになり、結果、自国には低賃金産業しか残らないという現象が起こる。このことから、多国籍企業の海外流出を防ごうとすれば、低賃金の国からの輸入を止めなければならないという結論に達する。

 

これに対し自由貿易論者は、保護貿易は保護措置によって製品価格の上昇を招き、消費者の利益を損なうと反論する。しかし、この議論には真実味が無い。確かに保護貿易によって物価の上昇はあり得るが、一方それと同時に賃金も大きく上昇するからである

 

現代の経済にとって実質賃金の下落とは、賃金の上昇が物価の上昇に追いつかない状態になり、その結果、賃金労働者の購買力が落ち込むことである。価格の低い輸入品によって国内の製造業が低迷すると、賃金の上昇が物価の上昇に追いつかなくなることは、歴史を見れば明らかである。確かに自由貿易は価格の上昇を抑えるが、それ以上に賃金の上昇を抑える。実質賃金の下落は消費の落ち込みをもたらし、自由貿易による価格の下落は賃金の下落によって相殺されるのである

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