ブライアン・パーマーの生活(2)

ロバート・N・ベラー、R・マドセン、S・M・ティプトン、W・M・サリヴァン、A・スウィドラー 共著 「心の習慣」アメリカ個人主義のゆくえ(みすず書房)より

 

成功へのあくなき執着

離婚によってブライアンは人生を根本的に見つめ直すことになった。それまで自分が追い求めていた成功には限界があることを深く考えさせられた。

 

離婚はこれまでの人生で最大級の驚きでしたね。私はあらかじめ計画を立てておいてから動くタイプです。でも独り身で暮らすのに計画なんかありませんでしたから、ものを考える時間がたんとあります。考え込んでいるうちに、もうほんとに長いことやっていなかった読書を始めました。大学を出て以来忘れていたクラシック音楽のことを思い出して、初めてバッハのアルバムを買いました。考えることといったら、まずたいてい独り暮らしの方法、それから子供との接し方でした」。

 

子どもたちはブライアンと一緒に暮らすことを選んだ。彼は人生の優先事項について、これまでの考え方を改めなければならないことに気づく。

 

片親というものは世間で言っているようなものじゃないって、つくづく思い知らされましたね。まったくみじめなもんです。朝会社に出かけると、私付きの秘書がいて、参謀もおそろいで待っていて、何百という人間が私の命令で動いています。ところが、家に帰ると、どこぞのトム、ディック、ハリーと同じこと、我が子ながら三人のデカい奴らの食事の始末に追われることになる。二時間かけて夕食の準備と後片付け、それから洗濯、洋服をたたんで床掃除と、ロクでもない肉体労働ばっかりです。でも息子たちが私と暮らすほうを選んだというのは、私にとって非常に意味のある事でしたね。ひよっとして俺は『子育て課』でもまずまずの成績を上げていたのかなってわけです」。

 

妻は去り、彼女が不倫していたことも後でわかった。とはいえ、こうして反省してみることでブライアンは、人間関係における自分自身の役割について考え直すことになる。

 

私は問題とあれば解決せずにはおけない性質(たち)なのです。今回の失敗についても分析してみました。私は失敗が嫌いです。負けるのは駄目、勝つことが好きです。そこで振り返ってみて、何がまずかったかのかと考えてみたのです。そうすると、夫婦生活がご破算となったことの少なくとも50%は私の責任であると言える。見方によっては99%まで私の責任と言えるかもしれない。私は自分に問いかけてみました。なぜ私はこの場合こうするのか?職場でこうするのはなぜか?家庭でこうするのはなぜか?― 結局わかったことは、私にとってある一つの価値が非常に重要だったということです。それは成功です。あるいは失敗に対する恐れと言ってもいい。しかし私の成功志向は異常でした。すべてが仕事の、出世の、会社の犠牲になっていました。馬鹿な話!そんなことではいけないのだと思いましたね」。

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