ブライアン・パーマーの生活(3)

ロバート・N・ベラー、R・マドセン、S・M・ティプトン、W・M・サリヴァン、A・スウィドラー 共著 「心の習慣」アメリカ個人主義のゆくえ(みすず書房)より

 

解決されない問題

人生の喜びと満足の源泉を問い直すことで、ブライアンの思考に革命がもたらされた。人生に望むべきものについての新しい考えを理解するようになったのは、先の妻とは非常に異なるタイプの女性と再婚してからのことである。

 

自由な気持ちで愛情を受け取り、愛情を送る。わが身を捧げてみればわかります。これはまったく互恵的なことなんですね。もっと相手に関わりたい、もっと分かち合いたい。ほとんど心理的高揚状態ですね。私の考えでは、真の愛というものは、相互に尊敬し、賞賛しあい、愛情を交わし、自由な気持ちで与え、受け取ることができてはじめて成立するものです」。

 

新しい妻はブライアンと同年齢で離婚歴があり、連れ子が四人。現在は自身の三人の子供を含めたうちの五人が家に残っており、一家にはあふれる活力、相互の献身、コミットメントがあって、楽しい生活を築いている。

 

さまざまな意味において、ブライアンの物語は個人的なサクセス・ストーリーである。彼は物質的に成功したばかりではなく、人生に求めるべきものについて、物質的以上に確かな何かをつかみ取るための機会を逸しなかった。しかし、彼の人生は大勝利であるにもかかわらず、また彼は確かに充実感を得ているように見えるにもかかわらず、ブライアンの話にはなおひとつ、はっきりしないところがある。何か大事なものが未解決のままになっている

 

主体性・一貫性の欠如

ブライアンの問題が明らかになるのは、出世一筋の人生よりも今の人生が良いと言えるのは、どうしてなのか?彼に説明を求めたときである。なぜ人生が変わったのか?なぜ現在は幸せだと言えるのか?彼の述べるところによれば、その主な理由は、自分にとって何が幸せなのかについての彼の考えが変わったことにあるらしい。彼の新しい目標

ー 夫婦生活と子供たちへの献身 ーも、以前までの物質的成功の追求と同じくらい恣意的で深い考えのないもののようである。両者とも、人生の目標に対する大きな展望に基づくものというよりも、単に個人的な好みということで正当化されているにすぎない。ブライアンは自分は一貫して功利的損得計算、自己の私的利益への献身を追求してきたのだと言うが、自分の個人的好みに生じた変化について説明することは出来ない。なぜ彼の好みは変化したのか?彼の話は、ときには過去の生活を間違ったものとして拒絶しているようでもあり、ときには以前の生活に飽きが来たと言っているだけのようでもある

 

まあ、優先事項をちょいと変えてみただけですよ。成功の追求オンリーなんて良い生活であるであるとは、とても思えません。今の私にとって、成功は最重要のことではない。自分は達成したいと思うものを達成することができる、そのことを自分に証明することに満足を見出していたのです。ですから目標の達成に挑戦することに、以前みたいな神秘的な魅力がなくなったのです。子どもたちと一緒にいることからだって、個人的な報酬がたくさん得られることに気づいたのです」。

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