既得権の喪失:ナチズムの心理(3)

労働者階級や自由主義・カトリック的ブルジョアジーの消極的なあきらめの態度と対照的に、ナチのイデオロギーは小さな商店主、職人、ホワイトカラー労働者などからなる下層中産階級によって、熱烈に歓迎された。

 

この階級の旧世代は、より消極的な大衆的基盤であったが、彼らの息子や娘たちがより積極的な闘士であった。息子や娘たちにとっては、ナチのイデオロギー

指導者に対する盲目的な服従と人種的政治的少数者に対する憎悪の精神、征服と支配への渇望、ドイツ民族と「北欧人種」の讃美は驚くべき感情的な魅力を持っていた。かれらの特徴的な社会的性格は、

強者への愛、弱者に対する嫌悪、小心、敵意、金についても感情についてもケチくさいこと、そして本質的には禁欲主義というようなことである。彼らの人生は狭く、未知の人間を猜疑嫌悪し、知人にたいしては詮索好きで嫉妬深く、さらに嫉妬心を道徳的公憤として合理化していた。彼らの生活は心理的にも経済的にも欠乏の原理にもとづいていた。

 

1918年のドイツ革命以前、君主政治の権威はゆるぎないものであり、それによりかかり、一体となることによって、下層中産階級の成員は安全感と自己満足的な誇りを獲得していた。また宗教や伝統的な道徳の権威がまだしっかり根を張っていた。家族はなお揺り動かされず、敵対的な世界における安全な避難所であった。個人は安定した社会的文化的組織に属し、そこで自分の明確な地位をもっていると感じていた。個人の経済的な地位には、自尊心と安定感を与える強固な基盤を持ち、よりかかっていた権威は、彼らに安定感をもたらすだけの強さを持っていた。しかし、

第一次世界大戦後、この状態は大きく変化した。旧中産階級の経済的衰退が急速に進行し、1923年に頂点に達するインフレにより促進された。このインフレーションは長年の労働による蓄財をほとんど完全に吹き飛ばしてしまった

経済的な要因の他に、彼らの安定を脅かす心理的事情が存在した。君主制の崩壊と敗戦である。君主制と国家が小市民の存在を支える固い岩であったが、その失墜と敗北は彼ら自身の生活の基盤を打ち砕いてしまった。インフレは経済のみならず、倹約の原理に対しても心理的な打撃となった。

小さな快楽の多くを犠牲にして、長年蓄えてきた貯蓄が、自分自身の過失でもないのに失われてしまうなら、貯蓄の目的は何であったのか?国家が紙幣や公債に書かれた約束を破るのなら、人は一体誰に信頼をおけばよいのだろうか?

 

戦後いっそう急速に衰退したのは、下層中産階級の経済的地位ばかりではなく、社会的威信もそうであった。戦前は労働者よりましなものとして自分を感じることができたが、革命後、労働者階級の威信が向上し、その結果、相対的に下層中産階級の威信が低下したのであるもはや見下ろすべき何人もなくなり、小さな商店主やその同類の人々にとって、最も貴重な資産の一つであった特権も失われた

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