ポピュリズムのヴィジョン

幸せを与えてくれるのは、富でも豪華さでもなく、穏やかさと仕事である」。

ついに起こらなかった害悪のために。われわれはいかに多くの時間を費やしたことか」。➡ トーマス・ジェファーソン

 

エスタブリッシュメントの高潔高貴なイメージとは逆に、ポピュリズムのヴィジョンはアメリカの伝統における平等主義的エートスを強調した。ここでは、しばしばトーマス・ジェファーソンが創設の英雄とされ、アレキサンダー・ハミルトンが代表的敵役とされた。

 

ポピュリズムのヴィジョンは、「人民」すなわち普通の市民たちは自分たちの事柄を自分たちで治めるだけの賢明さを持っていると主張していた。エスタブリッシュメントのヴィジョンと同じく、ポピュリズムの理想も「顔見知りの共同体」の政治だった。しかし、エスタブリッシュメントのヴィジョンの理想は初めから新しい全国的制度という眺望の良い高台を占拠した支配者向けのものであったから、ポピュリズムの論拠は野党的色合いをもつことが多かった。それでも1896年の人民党(ポピュリスト)のプログラムにおいては、ポピュリズムは共同善のために政府の権力を経済活動にまで広げようとした。

 

ふつうの市民の尊厳と重要性というポピュリズムの偉大なテーマは、しばしば聖書的言説によって語られた。ポピュリズムは、アメリカ宗教の無律法主義・神秘的主義的側面とセクト的宗教の熱烈な共同体コミットメントとの両方と類似性を持っている。

 

エスタブリッシュメントのヴィジョンが共和主義的な共同善の理想の重要な側面を、世紀の変わり目のアメリカで再び表明したとすれば、ポピュリズムは、十全な市民的権利から排除された市民のある限り、その共和国は不完全なものであると主張し、民主化の偉大な促進者の役割を演じた

 

両者には小さからぬ不一致があるとはいえ、エスタブリッシュメントとポピュリズムの二つのヴィジョンは、出現しつつある産業化社会を公共の秩序に取り込む必要を主張したという点では互いによく似ている。市場の極端な道具主義的モーレスに脅かされつつあるかに見える、市民的・倫理的な価値を再び取り戻すことを主張したのである。


ロバート・N・ベラー、R・マドセン、S・M・ティプトン、W・M・サリヴァン、A・スウィドラー 共著 「心の習慣」アメリカ個人主義のゆくえ(みすず書房)より

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