シュレーディンガーの猫
量子論は「とても難解だ」と、よく言われる。扱う対象が目に見えない世界であり、マクロの世界(目に見える現実)とずいぶん違うことがいくつかの理由の一つ。他のもう一つに数式の難しさがある。量子論を本当に理解しようとすれば、難解な数式を避けて通れない。しかし、数式を相手にできないと、私たちが少しも理解できないかというと、そうとも限らない。佐藤勝彦「図解雑学・量子論」ナツメ社より
佐藤勝彦「図解雑学・量子論」ナツメ社より
☟
この実験(実際にやったわけではない)を考えたのは、波動力学を確立したシュレーディンガーである。しかし彼は、この仮想実験で量子論を擁護したのではない。反対に、確率や不確定性などといったあやふやなものを持ち出すコペンハーゲン学派(ボーア、ハイゼンベルク、パウリ、ディラック、仁科芳雄)に、ある種の皮肉を浴びせたのだ。事実、彼は波動力学を成立させた後、量子論への興味を失い、生物学へと研究対象を変えてしまった。
■猫の量子力学的運命(思考実験)
1、ラジウムからアルファ粒子が出ると、(1時間以内に粒子が出る確率を50%➯ 量子論で確率的にしか予言できない性質の現象とする)
2、ガイガーカウンターが検知し、装置に信号を送る。
3、すると、装置は青酸カリ入りのビンを開けて、
4、青酸ガスが出て猫が死ぬ。
「図解雑学・量子論」ナツメ社:イラスト㈱エム・エー・ディー東京
1時間後に猫がどうなるか、(箱を開ける前)普通に考えると、「猫は死んでいるか、生きているか、どちらかの状態で箱の中にいる」ということになるが、量子力学的にいうと、猫は生きている状態の確立が50%で、死んでいる状態の確立が50%の状態、つまり、<生と死の状態を、併せ持った状態で存在している>ということになる。
「図解雑学・量子論」ナツメ社:イラスト㈱エム・エー・ディー東京
箱を開ける前「猫は生きているか死んでいるかの、どちらかの状態で確定しているが、箱を開けて確認するまでは分からない」とは考えずに、<生と死が半分ずつ重なり合っていて、蓋を開けた瞬間にどちらかに確定する>と考えるのだ。
「図解雑学・量子論」ナツメ社:イラスト㈱エム・エー・ディー東京