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考える力を奪われると、感情が無くなる。

 

HopiHopi日記ー読書日記に雑記少々。本を読んで、いろいろ考えます。2014年9月15日:書物を焼く人間は、やがて人間を焼くことになる/レイ・ブラッドベリ 『華氏451度』  より

 

この小説は、本の無い未来世界を描いた空想実験の話である。秘密警察のように本を見つけ次第焼き尽くすことを任務とする昇火士のガイ・モンターグ。彼は自分の仕事に疑問を持たず、焚書に明け暮れる毎日を過ごしている。しかし、ある日、何気なく持ち帰ってしまった本が、彼の運命を変えることになる。

 

この未来世界では、人々に物を考えさせないために本の存在を消去しようとしていることが明らかになる。政府や権力者に疑いを持たず、与えられるものを享受し消費するだけの存在、操り人形のような人間を作るために本を燃やしているのだ。昇火士のリーダー・ベイティーは言う。

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誰かを政治問題で悩ませて不幸な思いをさせるのは忍びないと思ったら、ひとつの問題に二つの側面があるなんてことは口が裂けてもいうな。ひとつだけ教えておけばいい。もっといいのは、なにも教えないことだ。戦争なんてものがあることは忘れさせておけばいいんだ。

 

たとえ政府が頭でっかちで、税金をふんだくることしか考えていない役立たずでも、国民が思い悩むような政府よりはましだ。平和がいちばんなんだ、モンターグ。国民には記憶力コンテストでもあてがっておけばいい。

 

不燃性のデータをめいっぱい詰めこんでやれ、もう満腹だと感じるまで「事実」をぎっしり詰めこんでやれ。ただし国民が、自分はなんと輝かしい情報収集能力をもっていることか、と感じるような事実を詰めこむんだ。そうしておけば、みんな、自分の頭で考えているような気になる。動かなくても動いているような感覚が得られる。それでみんな幸せになれる。

 

なぜかというと、そういうたぐいの事実は変化しないからだ。哲学だの社会学だの、物事を関連づけて考えるような、つかみどころのないものは与えてはならない。そんなものを齧ったら、待っているのは憂鬱だ。

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お陰で人々はテレビやラジオから流れてくる中身の無いエンターテイメント番組で余暇時間を消費し、選挙になれば隣の人と同じ候補者に投票することになる。みんな同じで、みんな平和だ。物を考える必要はない。それは与えられるか、みんなに合わせればいいのだ

 

この小説では、こうした生活を送ることで人々の記憶力が著しく減退していることが描かれている。短期記憶しか保持できない鶏のようだ。脊髄反射的に日々を暮らしている。もやは考える必要は無いからだ。モンターグと彼の妻は二人とも 最初に出会った場所を思い出すことすらできない。二人が出会った一番大切な場所すら覚えていないのだ。出発点が無い二人は何のために結婚生活を送っているのかすら分からない

 

恐らく、考える力を奪われると、感情が無くなるのである。深く誰かを愛したり、将来を憂えたり、誰かに怒りを覚えたり、そんな人間らしい感情は考える力や記憶と関係していることを小説は描いている。だから、小説に出てくる普通の人々は感情の起伏が乏しく、ヘラヘラと毎日を無為に過ごしているのだ。

 

考えようによっては、理想的な社会かも知れない。争いや喧嘩もなく、人々は平和を享受している。しかし、心を無くした代償によって得られた"かりそめ"の平和がどうなるかは、小説を最後まで読めば分かる。戦争がすぐそこまで迫っていることを見てみぬ振りをした人々の末路こそ、この小説が教えてくれていることだ。「考えろ」と
 
それにしても、この『華氏451度』で描かれている未来世界は、2014年の日本と見まごうばかりだ。ん?ということは、現代の日本はディストピア…これ以上は止めておこう

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地球ネコ
内村鑑三の言葉
日本に欠乏しているものは何か。それは富ではない。知識ではない。才知ある計略でもない。愛国心でもない。道徳でもないだろう。欠けているのは「生きた確信」である。真理そのものを愛する「情熱」である。この確信、この情熱からくる無限の歓喜と満足である。
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武者小路実篤の言葉
何のためにあなたたちは、生きているのですか。国のためですか、家のためですか。親のためですか、夫のためですか、子のためですか。自己のためですか、愛するもののためですか。愛するものを、持っておいでですか。
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佐藤蓼丸

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