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「束ねられたい」人たち

ヒトラーは最初、旧中産階級の救世主であると見せかけて、百貨店の破壊、銀行資本の支配の打破などを約束した。その記録はまったく明らかである。これらの約束は決して果たされなかった。しかしそんなことは問題ではなかった。ナチズムは純粋な政治的、ないし経済的な原理は何も持っていなかった。ナチズムの原理といえば、まさにその、はなはだしい日和見主義であるということを理解することが大切である。⇨ エーリッヒ・フロム「自由からの逃走」東京創元社より


注目の人 直撃インタビュー:片山杜秀氏 日本は“束ねられる”ファシズム化が進んでいる/日刊ゲンダイ・2019/05/20より

――ファシズムはどの程度まで進んでいますか

数字で示すのは難しいですが、かなりファシズム的状況にあると言っていいと思います。独裁政党こそありませんが、野党は与党に似たり寄ったり。保守主義的で、資本主義の延長線上に立って「この国をもう一度豊かにします」と幻想をうたっている点では、共産党以外の野党は与党と変わらない。

 

思想や政策に十分な相違がないとすれば、有権者は同じことをやるなら経験を積んでいる政党の方が安全と考える。だから、安倍首相が面目を失うことがあっても、「悪夢のような民主党政権」とリフレインすると、一定数の国民がリセットされてしまう

 

個を原則的に認めないのが全体主義で、個のスペースが幾分なりとも保障されているかのような幻想を与えるのがファシズムと言えばわかりやすいでしょうか。みなさんを自由にするため、夢を取り戻すため、いっとき不自由になっても我慢して下さい。これがファシズムのやり方です。

 

「束ねる・束ねられる」ことをたくさん感じているときがファシズム的状況と言えるでしょう。ファシズムは社会主義か自由主義かで割り切れない。変幻自在に形を変える。精神論や右翼的な旗印が有効であれば、それをトコトンやる。国民の団結を保つために社会主義的施策が有用であれば臆面もなくやる理屈は抜き、束ねられれば手段を問わないのがファシズムです。

 

資本主義の危機の時代に没落する中間層の“希望の星”としてファシズムが現れるからです。典型例はワイマール共和国時代のナチス支持者、トランプ米大統領に熱狂するラストベルトの白人労働者。

 

もっと豊かになるはずだったのにどうもおかしい、社会のせいでうまくいかない、と感じている階層です。日本も似たような状況です。就職先は終身雇用で、何歳で結婚して子供を何人つくって、何歳までにマイホームを持って・・・・といった従来の生活モデルが崩れた。そうすると、自由を少しばかり差し出しても、みんなで束ねられることで助け合い、危機的状況を乗り切ろうという発想になる。自由を取り戻すステップとして、束ねられることが必要だという思考に入っていきます。

刹那主義と虚無主義

保障と正義が存在する社会でさえも、個人の創造的な自己活動が促進されないならば、生を愛好する傾向を助成しないかもしれない。人間が奴隷ではないということだけでは十分でない。すなわち、社会的条件がオートマトン(自動人形)の存在を助長すれば、その結果は生を愛好することではなくて、死を愛好することになろう。この最後の点については、さらに詳しく核時代におけるネクロフィリアの問題を取り扱うページで、ことに社会の官僚機構の問題として述べることにする。⇨ エーリッヒ・フロム「悪について」紀伊国屋書店 より




注目の人 直撃インタビュー:片山杜秀氏 日本は“束ねられる”ファシズム化が進んでいる/日刊ゲンダイ・2019/05/20より

――ターニングポイントはいつですか。
3・11でしょう。冷戦構造崩壊後、そういうフェーズに入っていく流れはありましたが、3・11が決定的だと思います。この経験でフェーズが変わってしまった。日本が災害大国だという認識は共有されていましたが、政府は対応可能な防災計画を立て得ると説明し、国民の不安を打ち消してきた。

 

ところが、東日本大震災では日本列島全体が揺れ動き、原発事故はいまだに収束しない。その後も各地で地震が頻発している。南海トラフ地震のリスクもある。いつ巨大災害に襲われても不思議ではない状況をウソとは言えない。地震予知は不可能だとオフィシャルに認めている状況下で、われわれは明日をも知れぬ身で生きている。2011年以降、日本人は刹那主義と虚無主義に陥ってしまいました。真面目に考えても対応できない災害と隣り合わせで暮らしているわけですから。

 

――危機感の点で言うと、安倍政権は一時は中国包囲網に躍起になり、核・ミサイル開発に猛進する北朝鮮を“国難”と呼び、足元では韓国と対立を深めています。

内政で国民に対する訴えかけが弱くなると、外に向かうのは歴史が物語っています。富の再分配といった社会主義的政策で国民のガス抜きをするには、経済成長が必須。それができない場合は非常時の持続が有効に働く。北朝鮮がミサイルを発射するたびにJアラートを作動させれば、5年や10年は簡単にもってしまう。

 

――刹那主義、虚無主義、対外的緊張が重なればますます思考停止です。
リアルに考えれば、この国は経済成長しないかもしれない、貧富の格差が拡大するかもしれない、社会保障はますます削られていきそうだ・・・・。安倍政権が夢物語を喧伝しても、不安は払拭されない。さらに、AI社会になれば人間は不要とされかねない。しかし、こうした問題が国民的議論に結びつかないのは、安倍政権がだましているからというよりも、国民が厳しい現実から目をそむけているからです

 

国民の気分も問題なのです。なぜかというと、現実を直視しても解決のしようがないから。こうして刹那主義や虚無主義が増幅され、便乗したファシズムのオポチュニスト(ご都合主義者)的な部分がかぶさってくる。世論ウケのいい政策を次々に打ち上げ、中途半端なまま別のテーマに移っていく。






民主社会主義的な目線

注目の人 直撃インタビュー:片山杜秀氏 日本は“束ねられる”ファシズム化が進んでいる/日刊ゲンダイ・2019/05/20より


――本来は、いい加減な政治に対する国民の怒りが爆発する局面です。
声を上げ続ける人は少数派。「実現不可能なことでも言ってくれるだけでうれしい」というレベルまで国民の思想が劣化していると思います。お上はうまく統制するため、下から文句が噴き出ないようおべんちゃらを言う。それを期待する国民感情がある。上下の平仄(ひょうそく=つじつま)が合っている怖さがある。

 

「おかしい」と訴える人の声は、「平仄が合っているんだからしょうがない」と考える人のニヒリズムにかき消される。原発事故への対応、反応もそうです。嫌な話を聞いても解決できないし、東京五輪の話題で盛り上がった方がいいという雰囲気でしょう。元号が変わった、新しい時代を迎えた、お札も変わる、それぞれの花を大きく咲かせることができる・・・・。そんなことで内閣支持率が上がる。政府の考えと国民の求めが無限にかみ合っている。終末的ですね。

 

――流れを変える手だてはないのでしょうか。
仮に安倍政権が倒れても、世の中がガラリと変わることはないと思います。「決められない政治」を否定した結果、政治主導の名の下に内閣人事局が設置されて官僚は生殺与奪権を握られ、官邸は霞が関の情報を吸い上げて権力を肥大化させ、戦前・戦中にはなかった強力なファシズム体制を敷いた。「決められる政治」の究極の形態を実現したのです。

 

唯一可能性があるとしたら、来年の米大統領選に再挑戦するバーニー・サンダース上院議員のような民主社会主義的な発想を広げることでしょう。人権を擁護し、ファシズム的なキレイごととは一線を画す社会を目指すのです。最大多数の国民がなるべく束ねられずに、しかし助け合って生きていく。人間社会の当たり前の理想を思想的にハッキリ表明する政党が大きな形をなさないとまずいでしょう。難しいですが。

 

――民主社会主義的なプランを掲げる政治勢力が必要だと。

高度成長が再現できれば、新たな政策実行にいくらでも予算が付き、昔ながらのパイの奪い合い政治でも結果オーライでうまくいく。しかし、もはやそこには戻れないでしょう。戻れるかのような甘言に何となくごまかされているうちに、残された貯金すら減らしているのが今の日本ではないですか。この現実認識を持てるか持てないかです。本当の現実を思い知れば、民主社会主義的な目線で考えるしかないのではないですか。最大多数の国民の人権と暮らしが守られ、人間を見捨てない国を目指すサンダース目線の政治が必要でしょう。(聞き手=坂本千晶/日刊ゲンダイ)


共和国のサラリーマン

現代ビジネス:2019年2月8日/普通のサラリーマンをユダヤ人虐殺に突き進ませた「組織悪」の正体 より

 

ワイマール共和国の建国から今年で100年。前回の記事では、先進的な民主憲法を制定し、百花繚乱のワイマール文化が興隆した共和国が、わずか14年でナチスの台頭を許す過程を素描した。今回は、ワイマール共和国のサラリーマンに着目して、現代にも通じる組織の病理を考える。⇨ 根本正一(ジャーナリスト)

 

ワイマール共和国のサラリーマン

当時のドイツのサラリーマン数は350万人(うち女性が120万人)。主な職業は商業を中心に、工場や銀行、運輸部門などで働く事務員や技術者などである。労働者総数が2倍に伸びようとする間に、サラリーマン数は実に5倍も伸びた

 

フランクフルト新聞の記者だったジークフリート・クラカウアーは、ルポルタージュ『サラリーマン』(1930年)で、ワイマール時代のサラリーマンたちを以下のように描写した。

 

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「頭脳労働がしたい」「綺麗な仕事がしたい」。学校を出たての青年男女たちはアンケートにこう答えている。20世紀初頭、サラリーマンが憧れの職業となり、経営者は学歴を求め、資格証明書を追いかける。親も子供を少しでも社会の上層に押し上げようと、教育投資を惜しまない。経営者側は、科学の装いを凝らした適性検査をあてがう。「労働には喜びがある!」と。

 

しかし近代的企業の合理化された社会では、もはや個性を発揮できるような仕事はほとんどなく、体制の好む画一的なサラリーマン像だけが形づくられている。直属上司の課長補佐からパワハラを受けた挙げ句、解雇された事務系サラリーマンが労働裁判所へ訴え出たが、その企業の幹部は原告も課長補佐も知らず、「なぜ、直接言ってくれなかったのか」と驚きを隠さない――。

 

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組織のヒエラルキーのもとでは、トップと末端との意思疎通はほとんど存在しない。経営陣は静かな重役室にいて、経済合理的な決定を下す。中間管理職とて経営トップに接するのは稀で、組織はトップの意思を離れて独自の運動をする。

 

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「家具と毛皮のコートを売り払い、生活をしのいでいる」「全ての人間に信頼が持てない。妻とは離婚。自殺の思いにも駆られる」――。中年失業者へのアンケート回答の一部だ。仕事の合理化が進めば、中高年労働力が排除される。給料は高くせねばならない反面、新しい技術についていけない


すまじきものは宮仕え

現代ビジネス:2019年2月8日/普通のサラリーマンをユダヤ人虐殺に突き進ませた「組織悪」の正体・根本正一 より

 

政府は失業率を抑えようとして中高年層の解雇にブレーキをかけようとするが、再就職しようにもなかなか受けつけてくれない。単純労働者と賃金が変わらなくなっても、教養が売り物の彼らは同列に扱われることは耐えがたく見栄を張るのに躍起となる。身だしなみも含め、文化的生活を維持するのは経済的にも大変だ。

 

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あるデパートでの話。女性事務員は「プリンセス」と呼ばれ、女性店員より大事にされる。そして商品発送係の女性は、倉庫と商品置き場との連絡を行っている同僚に比べて、とてつもなく立派だとうぬぼれていたという――。「サラリーマンの最下層でさえ、自分は他とは違っているかのように振る舞う」。

 

組織の中で頭角を現わそうとするサラリーマン同士は、表面上の親密さとは別に団結しにくい。経営者側はそれを承知していて、個別に地位などのエサを与えて引き離しにかかろうとする。数々の企業福祉制度とともに、季節ごとのパーティー、企業内スポーツクラブなど。

 

従業員がバラバラでは仕事も円滑に遂行されないから、疑似共同体的な連帯感を醸成しようと様々な趣向を凝らす。有名なスポーツマンを招いて、スポーツの精神がサラリーマン組織にも重要と力説する。クラカウアーは徹底的な植民地化過程と断じる。

 

経理といった普通の業務に携わる数人の中高年サラリーマンとダンスパーティーの夕べに参加したクラカウアーは、普段は謹厳で、静かで目立たない彼らが豹変して飲んでは踊りまくる狂態に驚いた―。「決断を避け、現実よりも生活を魅惑するものを好む」。

 

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単調な労働が続けば続くほど、夜は日常からできるだけ離れようとする。大都会ベルリンはきらびやかなネオンの下に居酒屋、キャバレー、ダンスホールなどが溢れている。現実の惨めさを覆うべく、気散じとしてのイリュージョンが感覚を麻痺させる

 

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・・・・・以上がクラカウアー『サラリーマン』で描かれているワイマール共和国のサラリーマン像だ。現代の我々と余りにも似てはいないだろうか?⇨ 根本正一

 

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地球ネコ
内村鑑三の言葉
日本に欠乏しているものは何か。それは富ではない。知識ではない。才知ある計略でもない。愛国心でもない。道徳でもないだろう。欠けているのは「生きた確信」である。真理そのものを愛する「情熱」である。この確信、この情熱からくる無限の歓喜と満足である。
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武者小路実篤の言葉
何のためにあなたたちは、生きているのですか。国のためですか、家のためですか。親のためですか、夫のためですか、子のためですか。自己のためですか、愛するもののためですか。愛するものを、持っておいでですか。
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佐藤蓼丸

Author:佐藤蓼丸
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