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「組織の人」の無自覚な犯罪

そこで浮かび上がってくるのが、組織論理のなせる業である。近代の官僚制的ヒエラルキーのもとでは、職務自体が冷淡な人間関係のもとに事務的になっている点がまず挙げられる。そこでの組織人は仕事を完璧にやり遂げることに腐心し、その道徳的論議に踏み込むことはしない

 

そうした組織においては、組織人は集団から疎外されることを最も嫌う。そもそも権威を有する上位からの命令に抵抗するのは、基本的に難しい。一歩前に出ることによって、集団から自分が切り離されるのは辛いことだ。「順応への圧力」が働く。その方がまた、「組織のなかで認められたい」という欲求も満たすことができる。

 

組織のなかで人間が自分を見失うとき、その構成員同士の化学反応によって組織全体がとんでもない方向へと突き進む。しかも、彼ら自身はそれに気づかないか、気づいていてもその事実を見ないように努める。現代日本もまた然りである。⇨ 現代ビジネス:2019年2月8日/普通のサラリーマンをユダヤ人虐殺に突き進ませた「組織悪」の正体・根本正一 より

 

 

それぞれの思惑を抱いて組織内での自己実現を図るワイマール時代のホワイトカラー層は、経済合理化の波にさらされてその思いを達成できず、その不満解消をナチ党に求めていた。ナチ党は少なくともドイツ人の失業を解消し、モノや余暇に溢れた生活を保障し、また力によって道徳と秩序を回復した。それだけではない。ナチ党は傷ついたホワイトカラー層の自尊心を蘇らせるのには成功した

 

ここにワイマール期にサラリーマン生活に挫折し、ナチ党に入党、ナチの政権獲得後にホロコーストに多大な役割を果たした有名な人間がいる。ナチ親衛隊(SS)傘下の秘密国家警察(ゲシュタポ)のユダヤ人課長、アドルフ・アイヒマンである。

 

アイヒマンは1906年生まれ、父親は電気軌道会社の計理士で、厳格なプロテスタントの家庭で育った下層中産階級の出である。しかし、5人兄弟のなかで最も成績が悪く、職業訓練学校も中退。その後、ワイマール期には父親の人脈でセールスマンとしての生活を続けたが、業績も挙げられず解雇されてしまう。

 

しかし、そのころオーストリア・ナチ党に入党したことが、彼を時代の寵児へと押し上げた。SSに入隊すると、後の国家保安本部長官ラインハルト・ハイドリヒに見出される。アイヒマンはユダヤ人担当課に配属され、オーストリアがドイツに併合(1938年)されると、同国内のユダヤ人の移住政策に邁進する。

 

彼は深く物事を考える人間ではなかったが、ユダヤ人を故国パレスチナに向かわせるシオニズム運動に共鳴していて、強制移住は善行と信じていた。しかし、追い出した後に他国がユダヤ人の受け入れを好まず、強制収容所送りになることには思いが至らなかったようだ

 

駆り集めたユダヤ人の人数と、目的地の収容所の収容人数、また1つの列車に詰め込める人数と目的地までの輸送距離・時間から、綿密な列車時刻表を組み立てる――この数学的な公式を解く作業は、セールスマン稼業を送った経験のあるアイヒマンには得意とする分野であったようだ。

 

その流れ作業的な、効率的な官僚的手法は、短期間で大量のユダヤ人を抹殺するナチの政策にぴたりと当てはまった。アイヒマンはその功績を認められてユダヤ人課長まで出世している。彼は命令を忠実に実行して、それが認められることに最大の喜びを感じる人間であった

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地球ネコ
内村鑑三の言葉
日本に欠乏しているものは何か。それは富ではない。知識ではない。才知ある計略でもない。愛国心でもない。道徳でもないだろう。欠けているのは「生きた確信」である。真理そのものを愛する「情熱」である。この確信、この情熱からくる無限の歓喜と満足である。
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