働き方の改革
サスナビチャンネル「ハーマン・デイリーの定常経済を考える」より 話し手:枝廣淳子・環境ジャーナリスト、聞き手:足立直樹・株式会社レスポンスアビリティ代表取締役
足立:どれだけのコストがかかっているのかという、社会に対しての費用が見えてきて、これを同じ会計の中に組み込むと、発達しているのかどうか、成長しているのかどうか、という判断がしやすくなる。
枝廣:そういうことはすごく大事ですね。本当に定常経済にしようと思うと、大事なのは先ず上限が分かることなんですね。たとえば、CO2が分かりやすいので、温暖化でいうと地球全体が吸収できるCO2の量というのは決まっていますよね。そうするとそれが地球の上限ですよね。
その範囲内なら地球は吸収できるけど、それを超えると温暖化が進んでしまうので、地球レベルであれ地域レベルであれ、経済を定常化しようと思ったら先ず上限(蓋)を決めると、そのキャップを決めたなかで、それはたとえば、キャップ・アンド・トレード(排出量取引)的なものでもいいし、割当制でもいいし、いろんな形があると思うのですが、すべての経済主体の合わせた量がキャップ以下になるような仕組みを入れてゆく。それは、炭素税でもいいし排出量取引でもいいし、方法論はいろいろだと思うんですが。常に上限に対して、現在どこにあるかということをモニタリングしながら、上限を超えないようにする。
足立:先ず共通のルールとして、どこまでだったらスループット増やせるのか、あるいは、もしかしたら超えちゃったのかもしれませんが、どこまで減らさなければならないか、そこは明確にする。
枝廣:地域レベルでいうと、駿河湾の桜エビ漁が分かりやすいんですが、駿河湾の桜エビ漁というのは、ある意味、定常経済の定常漁業というのをやっているんです。漁獲高がすごく減ったときに、このままでは持続可能ではないということで、大学と組んで、生まれてくる桜エビの数とか、いろいろ調べて、駿河湾の中で何トンまでなら捕ってもいいか、つまり元本に手を付けずに、利子だけの分を計算したんですね。それがその上限、キャップですよね。
それに対して120隻漁船があるのですが、皆が捕りたいだけ捕ると、すぐに上限を超えてしまうので、今日は何トン取るというのを決めたら、皆が水揚げするたびに何トン捕ったか申告して、今日の上限に達したらお終いになるんですね。それで、漁獲高に差が出た場合、個人がどれだけ捕ったかにかかわらず平等に分けるんです。そうすれば、抜け駆けとかなくなって、スループットを超えることもなく、みんなが幸せ。それが、その漁協のやり方なんですが、やり方はどうあれ、先ず上限を決めること、その範囲内で収める仕組みを作ることが必要なんですね。
足立:ほかの国では、個別の船に先ず割り当てをして、漁船同士で売買するという話も聞きますよね。
枝廣:それは今世界では増えていますよね。排出量取引と同じで、上限でトンを決めて、割当して、場合によって売買して、誰がどれだけ捕ろうと上限は守る。