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新しい生産性の指針

ジェレミー・リフキン「エントロピーの法則・21世紀文明観の基礎」祥伝社 より


「生産性」をエントロピーで算出することの妥当性

生産単位当たりの速度で見た生産性と、生産単位当たりに生じるエントロピーで見た生産性の違いを知る例として、おもしろいものがある。


それには、人里離れたハイウェーをドライブしていて、燃料が空になりかけたときのことを考えればよい。次の給油所までの距離がわからない場合、ドライバーのとる態度には二つある。早く給油所に着こうと車と飛ばすか、逆にゆっくりと走るかのどちらかである。こうした場面に出くわした場合、だいたいスピードを上げて、早く給油所に着こうとするのが普通である。


ところが、正解は逆で、ゆっくり走った方が余分に距離をかせぐことができる。これがガソリンの賢明な使い方である。たしかに時間はかかるが、その失った時間は浮いたエネルギーで埋め合わされる。


そうしてみると、熱力学的効率からいった場合、生産性を測る尺度はやはり、生産単位当たりの速度ではなく、生産単位当たりで生じたエントロピーが適していることになる


人間の労力あるいは機械の力によってエネルギーの消費が高まるたびに、エントロピーが増大し、製品の価値が減じて、環境全体のどこかで無秩序がなお一層高まる。したがって、生産性を生産単位当たりの速度で測っていくかぎり、資源を製品に転換するために必要な量よりも、余分にエネルギーが必要になる。こうして、エネルギーの流れが高まった結果、無秩序あるいはエントロピーが増大する。しかも、最終的にそのツケを払わなければならないのは、社会ということになるわけだ。


諺に「急いては事を仕損じる」というものがあるが、これは「エントロピーの法則」が意味するものを、直観的に言い表したものと言えよう。化石燃料が豊富に供給され、また特定の金属が大量にあり、工業を維持するのにいくら使われても大丈夫な間なら、速度を物差しにしても、それはそれでよかったのかもしれない。


ところが、既存の物質・エネルギー基礎が崩れ始め、さらに、過去の経済活動に起因するエントロピーの蓄積が、環境システムの吸収能力を上回りつつある現在、経済学者らは生産性という概念を大きく変える必要に迫られよう。そうしなければ、生産と消費という経済プロセスにおける熱力学的効率の要請に、もはや対応することができなくなるだろう。

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