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債務とエントロピー

*注意:放送日予告は2016年のものです。


ジェレミー・リフキン「エントロピーの法則・21世紀文明観の基礎」祥伝社 より


通貨と債務の問題もエントロピーに支配される

通貨と債務の問題は、バランスの取れた予算赤字の関係を誤解していることから生じてくる。フレデリック・ソディやハーマン・デイリーといった少数の学者たちは、通貨と債務という社会慣習と、自然におけるエントロピーの流れとの間に見られる、明らかな矛盾を指摘してきたが、そうした批判は、まだ学会から無視されている。


だが、通貨とは国家の国民に対する債務であって、社会における全物質的富を特定の現実的富(商品やサービス)と自由に交換できるものである。しかも、物質的富の発生は無限に続くとは限らないのに、経済学者はこの点を完全に無視している。物質的富に対して、その生み出される量に最終的な制限を加えているのが熱力学の法則であるにもかかわらず、彼らは通貨をどのくらい発行し、流通させるべきかについては、まるで制限を設けてはいない。この点に関して、ノーベル化学賞を受賞したフレデリック・ソディーは、次のように指摘している。


「債務は物理学の法則よりも、数学の法則に支配される。富は熱力学の法則に支配されるが、そうした富と違って、債務は月日が経ったからといって腐ることはないし、また、暮らしの過程のなかで消費されることもない。それどころか、単利と複利といった数学の法則からも知られているように、年に何パーセントもの割合で債務は増えていく」と。


また、経済学者ハーマン・デイリーは、社会が複利計算によって熱力学の物理的現実対抗した場合、それによって生じる避けることのできない結果について、最初の説明を行った人物である。ハーマン・デイリーによれば「債務は複利計算で永遠に増えていくが、実際の物質的富は同じ速度で増え続けることはない」と言う。なぜなら「その物理的大きさは、エントロピーの破壊力に支配されているからだ」としている。そして、ハーマン・デイリーはフレデリック・ソディーの初期の分析を援用しながら、次のように結論している。


物質的富が債務と同じ速度で増えることはないのであるから、両者の間の関係はある地点で崩れてしまう。つまり、どこかで債務の破棄なり、債務の解除なりが行なわれるはずだ。複利という確実なフィードバックも、インフレ、破産、あるいは没収課税(これらはすべて暴力を惹き起こすもととなる)といったように、債務の破壊という反作用によって相殺されてしまうに違いない」と。

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