出口なしの量的緩和~このままでは大変なことに-2
JIJI.COM:出口なしの量的緩和やな ~このままでは大変なことになる~【怒れるガバナンス】より
◇実感なき景気回復
こんなに金融緩和、低金利にしても景気が良くなったという実感はない。
日本が金融緩和に手を染めたのは2001年のことだ。あまり効果がなかったので、13年にはアベノミクスによる異次元の金融緩和である黒田バズーカ政策を始めたのだが、それもあまり効果が見られない。
効果が見られないと言うと、そんなことはないと反論されるだろう。雇用は回復し、株価は上昇し、物価上昇は目標の2%に届かないが、国内総生産(GDP)もプラスになっているではないかと。
確かにその通りだが、各国の金融緩和(それによる低金利)は大企業、大銀行、資産家のみを潤し、格差を拡大しているだけだと強く批判する書籍がある。
「中央銀行の罪─市場を操るペテンの内幕」(ノミ・プリンス著、藤井清美訳、早川書房刊)だ。著者は米国のゴールドマン・サックスなどに勤務経験のある気鋭の女性ジャーナリストだ。
◇金融緩和という「共謀」
彼女はメキシコ、ブラジルなど、新興国や中国、欧州、そして日本の中央銀行を徹底的に取材し、そこに君臨するトップたちが、世界中に低金利のカネを無尽蔵にばらまいている「COLLUSION(共謀)」(本書の原題)の実態を暴露している。
この共謀、すなわち金融緩和(量的緩和)による低金利政策は、FRBが中心となっているのだが、彼女はこれをマジック・マネー・システムと呼び、低金利のチープマネーづくりを行う中央銀行トップたちをマネー・マジシャンと呼ぶ。
彼らは07年のサブプライムローン不況や08年のリーマン・ショックなど、米国発の金融危機に対処するため、量的緩和という非伝統的金融政策に手を染めた。
彼女が言うマジック・マネー・システムとは、「コンピューター上でマネーを作り出し、国債や証券(や株式)を買い取る見返りに、そのマネーを民間銀行や金融市場に注入する」操作のことだ。
私は08年4月、リーマン・ショックが発生する5カ月前に米国を訪問した。サブプライムローン不況で沈帯する米国の実情を取材したのだが、その際、ある有識者から「米国は日本のように不況を長引かせるようなことはしない。スピード感を持って対応する」と言われた。