出口なしの量的緩和~このままでは大変なことに-3
JIJI.COM:出口なしの量的緩和やな ~このままでは大変なことになる~【怒れるガバナンス】より
◇大企業はウハウハ
いわゆるジャパニゼーション(日本化)にはならないと言い切ったのだ。その政策が当時、日本も採用していた量的緩和というマネーづくり、マジック・マネーを生み出すことだった。FRBはこのシステムを世界に拡大した。
彼女は、マジック・マネーは世界をカジノ化し、低金利のチープマネーは大企業、大銀行の経営を安定化させ、資産バブルを引き起こし、格差を拡大しただけで、中小企業の貸し出しも増えず、労働者の賃金も上昇しなかったと批判する。
本書には、メキシコやブラジルなどの新興国が最初はFRBのマネーづくりに対抗していたが、そのうち取り込まれてしまう実態が詳述されている。それは欧州も同じだった。しかし、日本はFRBに非常に協力的で、まさに一体化していると言える。
第4章は「日本─マジック・マネーをどんどん生み出している国」と題して日本のマネーづくりを詳しく解説する。
日本は、12年に第2次安倍政権が誕生すると、金融緩和策に積極性が乏しいと思われた白川方明日銀総裁を任期途中で黒田氏と交代させた。
黒田総裁は、安倍首相の「無制限に緩和すべき」との意向を受け、「FRBの2倍に相当する過去最大規模」の量的緩和(黒田バズーカ)を実施し、安倍首相の期待に応えたのである。
ついにはマイナス金利に突入するのだが、「アベノミクスとマジック・マネーの年月は賃金上昇との明白な相関関係が示されてはいなかった」という庶民にとっての期待外れは今も続いている。
◇中国は覇権のためのばらまき
彼女は、中国にも1章を割いている。タイトルは「ドラゴンの台頭」だ。中国は、FRBのマジック・マネー・システムに「米ドルの優位性、それに危険な投機的資産バブルにも、公然と懐疑の念を示すようになった」という。
そして中国は、巧みに、ある時は強気に、FRBの言いなりにならないように努める。そのため、米国からの攻撃は強くなる一方(現在も)だが、独自の道を行こうとする。