人間の意識の基本的な側面
ケン・ウィルバー「無境界・自己成長のセラピー論」平河出版社より
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トランスパーソナルな体験はある意味で統一意識に似ているが、両者を混同してはならない。統一意識においては完全にあらゆるものにアイデンティティをもつようになるが、トランスパーソナルな体験では、アイデンティティは全体にまで拡大せず、有機体の皮膚の境界を超えるだけである。
あらゆるものと同一化しているわけではないが、有機体だけに閉じこめられているわけでもない。トランスパーソナルな体験をどう考えようと(本書のなかでその多くに関して詳細に議論することになる)、少なくともそういった形態のものが存在するという、無視することのできない証拠がある。つまり、これらの現象が、また別のタイプの自己の境界線を表していると断言できるのである。
この自己/非自己の境界に関する議論で重要なのは、アイデンティティには一つではなく数多くのレベルがあるということである。これらのアイデンティティのレベルは、理論的な仮説ではなく、観察可能なリアリティである。自分自身で立証できるのだ。
これらのさまざまなレベルを見るかぎり、身近でありながらも究極的には神秘的な「意識」と呼ばれる現象は、数多くの帯域ないしアイデンティティのレベルによって構成される一条の虹のような一つのスペクトルに見える。
読者は、これまでわれわれがアイデンティティの五つの種類ないしレベルを概説してきたことにお気づきであろう。もちろん、これら五つのレベルにはヴァリエーションがあり、個々のレベル自体も細かく再分割されうるが、これら五つのレベルは人間の意識の基本的な側面のように思われる。