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個人主義というツール

現代のカウボーイ1


現代のカウボーイ2


ロバート・N・ベラー「心の習慣・アメリカ個人主義のゆくえ」みすず書房 より

知的専門職は公共的・私的な大規模な官僚制のなかで働かなければならないことが多い。このような場合、何かを成し遂げるためにも、キャリアにおいて前進するためにも、外部の問題を解決するよりも官僚制的な規則と役割の操作のことで才能の多くを費さなければならないので仕事の価値に対する疑間はますます強いものとなってゆく。


組織人」ははたして真の個人でありうるのか。こうした不安は、ウィリアム・H・ホワイトの有名な『組織のなかの人間』よりはるか以前からあった。カウボーイと探偵が人気を呼び始めたのは、会社がアメリカ人の生活の中心的な制度となり出したころのことである


孤独だが道徳的な罪を免れた英雄のファンタジーは、現代の官僚組織のもとでの自己の人格統合をめぐる疑間に呼応したものなのだ


現代の中産階級のアメリカ的個人主義のアイロニー(皮肉)は、個人の側からはいまだに高いレベルの個人的な独創性や能力や合理性が要請されているというのに、成功の道を歩んでいる個人に自律性があるのかどうか、さらには「成功」することに意味があるかどうかまでもがますます疑わしいものになってきているという事実にある。


功利的個人主義・表現的個人主義は何よりも手段の合理性や個人的欲求の重要性を強調しているが、こうした強調も、人生の目的・目標に対する理解――これは過去には主として聖書的伝統・共和主義的伝統が供給していたものである――から切り離されてきたかのようである。


このような状況に対する応答のひとつは、これまでかくも長く中産階級個人主義の中心的目標であり続けてきた職業上の達成を、もはやそれ自体は目的ではないものへと、つまり私的なライフスタイルーーたぶん、ライフスタイルの飛び地で営まれるはずである――を達成するための道具にすぎないものへと変えてしまうというものであった。


だが3章、第5章で考察したように、この解決法にも疑間が残る。他者と生活をともにすることに個々人の満足以外の何の目的もないのだとしたら、職業的成功を人生の目的とする姿勢を掘り崩すことになった矛盾と同じ矛盾が、私的生活からも意味を奪うことになりかねないのである

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