プロテスタンティズム
ジャック・ブロス「世界宗教・神秘思想百科」JICC出版局
■宗教改革の諸分派
キリスト教徒すべてを司祭にする<普遍的な聖職>の原理は、結果として改革した教会のほかに多数の分派を生み出した。
宗教的な意味のプロテスタントという言葉が初めて現れたのは、シュパイヤー第二国会(1529年)のあとだった。ルター派の諸侯や諸都市が敵対するカトリック教徒の諸要求に対して抗議した。そのときから、プロテスタンティズムは宗教改革から出てきた多様な流れの全体を指すことになる。
これらの流れはすべて16世紀の宗教改革者たちから受け継いだ本質的な特徴をもっている。すなわち聖書のなかに記録されたような神の御言葉の絶対的な優位、聖書と祈りによる神と信者との直接の関係、信仰のみによる救済である。
宗教改革には未来の分裂の芽が含まれていた。16世紀以来、天啓論や千年至福論に基づく運動は、地上に神の王国を建設しようとして、存在する社会秩序に反逆したが、宗教改革者たち自身もそれらを鎮圧しなければならなかった。
そのときまでカトリックの位階制度により保証された宗教的な統一は、それ以来破れてしまった。宗教改革が始動させた解放運動の新しい発展に、対立するものはもう何もなかった。しかし宗教改革は最終的には解放運動を抑止したのだ。
政治権力に従ったルター主義、カルビニズム、イギリス国教会は、社会制度のなかに組みこまれていった。公的になったこれらの教会は、もっと急激な宗教改革を望む人びとと対立した。