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カルヴィニズムの呪縛

エーリッヒ・フロム著「自由からの逃走」東京創元社

新しい市場のメカニズムはカルヴィニズムの予定説と似たものがあるように思われる。


カルヴィニズムの予定説は、個人は善良になるようにあらゆる努力をしなければならないが、果して救われるかどうかは、かれの生まれる以前にすでに決定されていると説いている。市場の時代は、人間の努力の生産物を審判する時代となった


この事情のなかでもう一つ重要なのは、競争の役割が増大したことである。たしかに競争は、中世社会にまったくなかったわけではない。しかし、封建的な経済組織は協同の原理にたち、競争をふせぐ掟によって、規制され編成されていた。資本主義の発生とともに、これらの中世的原理は、個人的企業の原理へと次第に変わっていった。


だれもが自分でつき進み、自分で運命を試さなければならない。かれらは泳がなければ、溺れるほかはない。他人は協同の仕事をいっしょにやる仲間ではなく、競争の相手となった。そしてしばしば、食うか食われるかの岐路にたたされた


資本や市場や個人的競争は、たしかに十六世紀には、そののちの時代ほど、重要なものではなかった。しかし近代資本主義の決定的な要素は、個人にたいする心理的影響とともにすべて十六世紀までに準備されていたのである


われわれはいま当時の状態の一面をのべたが、もう一つの面が存在する。すなわち資本主義は個人を解放したということである。資本主義は人間を協同的組織の編成から解放し、自分自身の足で立って、みずからの運命を試みることを可能にした。人間は自己の運命の主人となり、危険も勝利もすべて自己のものとなった。


個人の努力によって、成功することも経済的に独立することも可能になった。金が人間を平等にし、家柄や階級よりも強力なものとなった


われわれが検討してきた初期の時代には、資本主義のこの面は発達しはじめたばかりであつた。それは都市の中産階級にたいしてよりも、少数の富裕な資本家にとって、より大きな役割を果した


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