fc2ブログ

二元論(デュアリズム)

アン・ウィルソン・シェフ「嗜癖する社会」誠信書房

この章で論じる最後のプロセスは、二元論のプロセスです。嗜癖システムのあらゆる特徴を有した基本的なプロセスがあるとすれば、この二元論だろうと私は考えています。


嗜癖システム固有のものとして述べてきた特徴のほとんどと、今まで説明してきたプロセスのすべては、二元的思考の中に見出すことができます。


私たちは二元的思考によって訓練されています。教育が二元的思考を私たちに植え込みます。これかあれか、正しいか間違っているか、善か悪か、内か外か、引くか足すか、黒か白か、まだまだ無限にあります。システムの中でこの思考は多大な機能を果たしています


まず第一に、複雑に入り組んだ世界を極端に単純化し、本来プロセスの中に普遍的に存在しているものをコントロールできるという幻想をもたらします。非常に複雑な様相を示す事柄を、くっきり二つの次元に分割できると考える時、私たちのコントロールの幻想はみるみる増大していきます。


二元的な思考のプロセスはまた、二極に分けた一方の側を肯定する場合、自動的に他方を否定してしまう状況をもたらします。それは次のような、年老いた母と息子のやりとりが示す場面です。「僕は青いシャツが好きなんだ」と息子が言うと、すかさず母親が聞き返します。「どうしたっていうの。赤いシャツは好きじゃないのかい?」。


二元的思考においては、何かを正しいと言えばその反対は間違いだとされてしまいます。世界は対立する二つのものが対をなす構造として認識されています。対立するもののいずれも正しいとか、この二項対立の他にも組み合わせがあり得るといった認識はまったくありません。


このきわめて二元的なプロセスによって、私たちは別の可能性の選択を妨げられています。白人の女性が自分たちの解放のためにだけ活動するのなら、有色人の女性の解放に対しては反対することになります。二元論が今まで、女性たちを分裂させるためにいかに利用されてきたかのいい例です。


また別の例は、自国の政府の政策に反対する人びとが、政府の敵側の支援にまわる場合に見られます。二元論においては、私たちも彼らも共に誤っているという考えは不可能です。二元論のプロセスによって異なる意見はつぶされていきます。すでに私たちが見てきたように、嗜癖システムの中では二元論のプロセスが他にもたくさん活用されているのです


二元的思考のプロセスはまた、二つの選択肢から一つを選ばなければならないような状況を創り出します。たとえ選択肢のいずれもが受け入れがたい場合でもです。そしてこのプロセスは人びとを身動きできなくさせ、安定(停滞)というものがあり得て、望ましいものでさえあるという幻想を彼らが持ち続けることを助けます


記事分類
新薬販促のため多額の金銭をバラまき
原子力発電所の仕組み M.V.ラマナとサジャン・サイニ
小出裕章「原発の終わらせ方~福島原発事故から10年のいま~」
ウクライナ・オン・ファイヤー
ジョン・ミアシャイマー「ウクライナ戦争を起こした責任はアメリカにある!」
健全な精神の小さな火花を燃やせ!
藤原直哉/4月:時局分析
藤原直哉/5月:時局分析
*
*
ランキングに参加しています
FC2ブログランキング
INポイントランキング
リンク
プロフィール

佐藤蓼丸

Author:佐藤蓼丸

内村鑑三の箴言
キルケゴールの箴言
芥川龍之介「蜘蛛の糸」朗読
クソどうでも良い仕事" は誰のため?
故赤木俊夫氏の主治医インタビュー
「悪の凡庸さ」ウィシュマさん死の映像
悪の本質は「受動性」
なぜ少なからぬ政治家はカルトに親和的なのか
能力の低い人ほど自己評価が高い/ダニング=クルーガー効果
能力の高い人ほど自己評価が低い/インポスター効果
【真理省】が捏造するプロパガンダ「オーウェル的な」
暴君のいない暴政「カフカエスク」
ナルシシズムという病
加藤諦三「ナルシシズムと攻撃性」
ケン・ロビンソン: 「教育の死の谷を脱するには」
陰(イン)陽(ヤン)の隠された意味 - ジョン・ベラミー
トゥルシー・ギャバード:大統領選スピーチ
エマ・ワトソン親善大使 国連でのスピーチ
マララ・ユサフザイ 国連本部でのスピーチ
グレタ・トゥーンベリ COP25でのスピーチ
「ミソジニー」ってよく聞くけど、どういう意味ですか?
予備校のノリで学ぶ「エントロピー」
諸行無常と諸法無我
藤原直哉「老齢先進国はどこへ行く」
藤原直哉「世界のタガが外れつつある」
藤原直哉「錯乱から沈黙に」
藤原直哉「トランプがSNSに戻ってきた」
金利上げるの?上げないの?【デモクラシータイムス】
2008年金融危機からの禁じ手による反則負け