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「無縁者」が世界を救う

2017.8.21 DIAMOND online:ブラック企業は日本社会の「立場」主義が生み出している より


このような社会構造ですから、日本人は皆、よりよい立場を手に入れようとがんばります。「家柄」と「学歴」とが、良い立場につくための重要な要素です。あとは「真摯さ」。真摯さを辞書で引くと、「ひたむきさ、物事を一心に行うさま」とあります。この美徳は、与えられた役を必死にこなすことであり、主体的な生き方を意味しません


自分で考え、自分の信念に従って行動する人を、日本人社会では「真摯」と褒めたりはしません。自分で考える人は、必ずしも立場に割り振られた役の通りには動きませんから、「みんなに迷惑をかけて身勝手だ」と責められます。


ブラック企業では、非人道的な労働を強いて(=役を与えて)、労働者が「もうできません」と悲鳴を上げると「みんなに迷惑がかかる」(=与えられた役をこなさず、他人の立場をおびやかしている)と責めます


これは、人権の観点から見れば当然、酷い話ですが、立場主義の観点から見れば「正論」です。つまり、ブラック企業の言い分は、日本社会では正当性を帯びているのです。私は、日本からブラック企業がなくならないのは当たり前だと思っています。立場主義の国に民主主義の価値観を当てはめれば、日本そのものがブラック国家だからです。


立場主義をよりよい形にする可能性があるとしたら、それは「無縁」の再導入です。「無縁」とは網野善彦という偉大な歴史学者の発見した概念で、それは「縁」が「腐れ縁」に堕落したら、その縁を切っても良い、という倫理観のことです。そして、その無縁の原理を体現した人を、「無縁者」と呼びます。


バブル期までの日本企業には、無縁者の活躍が至るところで見られました。たとえば、NHKの『プロジェクトX』でよく知られているように、日本ビクター(当時)のVHSは、窓際技術者たちによる、隠れプロジェクトが開発したものでした。昔は、こんな得体の知れないプロジェクトにも、ちゃんと予算と人が付くくらいの余裕が、日本企業にはあったのです


立場にがっちりついて役を果たし、派閥抗争に明け暮れるサル山根性オヤジだけでは、企業は成長しません。創造性あふれる仕事は、出世や派閥抗争とは無縁の人たちの得意とするジャンルなのです。


昭和の日本企業は、無縁者が組織に居着ける余地を持っていました。だからこそ、日本企業はダイナミズムを発揮して世界に重きをなしたのです。残念ながら、今では無縁者は排除の対象でしかありません。


高齢化が進む一方でAIが進化し、アジア諸国も発展していく。こんな環境下で、無縁者を排除した立場主義一辺倒を貫いていたのでは、日本は発展しようがありません。それはがむしゃらに働けばなんとかなった時代の価値観です。


今、不登校の子どもが増えていますが、私には、聡明な子どもたちが「学校で立場主義なんか叩き込まれても意味がない」と悟り、立場主義システムへの非暴力的抵抗運動を展開しているように思えてなりません。


立場主義の硬直性を緩和し、創造性あふれる仕事をできるのは、無縁者です。日本社会は今一度、無縁の原理を再導入すべきなのです。それが日本の未来を切り開く道です。



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