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無意識的な反作用が意識的活動を麻痺させる

C.G.ユング「タイプ論」みすず書房


この破局は客観的な形をとることもある、というのは客観的な目的がしだいに主観的な目的に取って代わられるからである。たとえばある印刷工が、20年の長きにわたって身を粉にして働いた結果、 一介の雇われ人から独立して大会社の社長にまで出世した。会社はどんどん拡張していき、彼は仕事にますますはまりこんでしまい、しだいに他の関心もすべてそこに投入していった。


彼は仕事に香み込まれてしまったのであり、その結果彼は次のような形で破滅に襲われた。すなわち関心が仕事だけに向いているのを補償するために子供時代のある記憶が無意識のうちに活動を始めたのである。つまり彼は子供のころ絵画や図案を描くことが大好きだったのである。ところが彼はこの能力をバランスをとるための余技として素直に受け容れる代わりに、自分の仕事に導入して自社の製品を「芸術的」に仕上げようと空想し始めた。


不幸にもこの空想は実行された。本当に彼は自分自身の原始的幼児的な趣味に合わせて製品を作り始め、その結果数年の後に彼の会社は倒産してしまったのである。彼はわれわれの「文化理想」の一つ、すなわち能力のある男は一つの最終目的にすべてを賭けなければならない、という理想に従って行動した。


ただしこの破局的な大詰めは、主観的な形、すなわち神経衰弱による虚脱状態という形をとることもある。こうした事態が生じるのは、無意識的な反作用が意識的活動を最終的には麻痺させることができるからである。


この場合無意識は意識に対して絶対的無条件の要求を押し付けてくるため、解きがたい葛藤が生じるが、この葛藤は大抵の場合、そもそも自分が何をしたいのか分からなくなり、何もする気がなくなってしまうとか、あるいは一度に何もかもやりたくなり、できないことにまで手を出そうとするといった形をとる。


文化的理由からすれば幼児的原始的な要求を抑制することはしばしば必要とされるが、このことはえてして神経症やアルコール・モルヒネ・コカイン・等の麻酔剤の乱用に道を開くことになる。


さらに深刻な事態になると、この葛藤が自殺という結果に終わることもある。こうした無意識の傾向の際立った特徴をなすのは、意識から無視されることによってそのエネルギーを奪われるにつれて破壊的な性格を帯び、その途端に補償的であることをやめてしまうということである。

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