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「神々の黄昏」

アンソニー・スティーヴンズ「ユング」講談社選書メチエ


キリスト教と、ドイツ社会の統制のとれた階層的構造とが、ドイツ人の無意識のなかにひそむヴォータン的な要素を抑圧していた。ヴォータンは、嵐と狂気をつかさどる情熱的で非合理な戦の神であり、その暴力的な精神は人びとの心をつかみ、逆上させ、血と破壊を渇望させる。そうした恐るべき元型の痕跡が、いまや動きだしている、とユングは訴えた。


1936年、 ユングはあえて異端的な説を述べた。すなわち、「ヴォータンの性格の底知れぬ深さのほうが」経済的原因や政治的原因にもとづいた説明よりも「国家社会主義をよく説明できる」「ヴォータン」、と。


ゲルマン神話の大きな特徴は、最後に神々が暗闇の力によって倒されることである。神話のドラマは「神々の黄昏」で終わり、 1945年の第三帝国のように、神々の住むヴァルハラは炎に包まれる。 1936年に、 ユングは、ヒットラーはこれまで抑圧されてきたヴォータン的要素の虜になっている、と指摘した。


ドイツの現象の印象的な点は、明らかに「憑かれた」ひとりの男が国民全体を一色に染め上げ、それによってすべてが動きだし、地獄に向かって落下しはじめたことである。「ヴォータン」


したがって、ユングはナチスの支持者でも反ユダャ主義者でもなかったと結論づけるのが公正というべきである。 ユングの次のような文章には、誰もが共感をおぼえるにちがいない。


私の書いた本をたとえ一冊でも読んだ人には明らかなはずだ。私はナチスの共鳴者であったことも反ユダヤ主義者であったこともないということが。私の書いたものをどんなに間違って引用したとしても、誤訳したとしても、組み換えたとしても、私の真の立場を変えることはできるはずがない。「C・G・ユングは語る」


ユングは気質的にもナチ・シンパになれるはずがなかった。彼はいかなる大衆運動にたいしても反感を抱いていた。彼にいわせれば、何よりも大事なのは個々人の心であり、大衆運動はそれを否定する。


彼は、どんな形であれ「主義」を忌み嫌い、教義を信じなかった。もちろん他のすべての人びとと同じく、彼にも影があった。彼が育ったような文化のなかで育てば、誰だって自分の影のなかにファシスト的な態度や反ユダャ主義的な態度をもたないはずがない。


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