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規範創造型の人間

菅靖彦「心はどこに向かうのか」NHK Books


つまり、規範依存型の人間から規範選択型ないし規範創造型への転換を果たすのだ。


この〈前個/個/超個〉という意識進化の見取り図をこれまでの人間の歴史にあてはめると、人間は自然と一体化して生きてきた原始的な暮らしから出発して、個人を単位とする個人主義の時代を作り上げ、これから個人主義と近代国家の枠組みを超えた超個人的な人類社会を築き上げようとしている物語が引き出される。


これは非常に明確で分かりやすいが、原始社会や原始的な暮らしをいまだに保ちつづけている先住民社会を前個的社会と決めつけていいのか、という批判もなされている。また、個人意識が不安定だという指摘は当たっているにしろ、それが必ずしも超個的な安定性を求める方向に行くとは限らず、現代では逆に、前個的な安定性へと退行する現象が多く見られるという指摘もなされている。


さらに日本のように近代化が上から押しつけられたような社会では、前個的な要素に個的要素が重なるという特殊な二重構造が見られ、ウイルバーの図式をそのままあてはめることはできない。


このようなさまざまな批判があるにせよ、ウィルバーのこの図式は、「宗教的なもの」「霊的なもの」が見境なく蔓延しはじめている現在の混沌とした状況の中に あって、これからの人間の意識進化になにが大切で、なにが危険であるかを見極めていく上できわめて示唆的なものを合んでいることは確かだ。


■自己探究をめぐる状況と問題点

自己探究の目的は結局、「自分を知る」ことにあるが、「自分を知る」とはどういうことなのだろうか。あまり言いたくない言葉だが、私が若い頃は、「自分を知りたかったら読書をしなさい」とよく言われた。確かに、偉大な文学はさまざまな人間の側面をかいま見せてくれるし、偉大な哲学の書は視点の持ち方によって物事の見え方が変わることを教えてくれる。


心理学が発達している現代では、人間の心の仕組みを懇切丁寧に解説してくれる本が相当数出回っており、心にまつわる概念化はかなり進んでいる。しかし、いくら万巻の書を読みあさり、なけなしの頭脳を絞りあげても、逃げ水のように逃げていってしまうのが「自分」というやっかいな代物なのではないだろうか

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