免疫システムの働き
近畿大学薬学部・久保道徳研究室「漢方医学双書ー1」排泄の医学と漢方
局所免疫を通過してしまうと、複雑なメカニズムを持つ免疫システムが働くようになります。一度かかったハシカは二度とかからないことはよく知られています。
それは消化、排泄の過程で一度マクロファージに貪食された異物の情報がマクロァージによってリンパ球という細胞に伝達されて記憶されるからです。
リンパ球は骨髄でつくられT細胞とB細胞とに分化します。Tリンパ球は胸腺(Thymus)を通過するのでTリンパ球といわれます。Tリンパ球には多くの種類があり、それぞれ役目がちがいます。
マクロファージからの情報を拡大してB細胞へ伝えるのがヘルパーT細胞です。逆に伝達を抑制するのがサプレッサIT細胞です。Tリンパ球からBリンパ球に異物の情報が伝達されると、形質細胞をへて免疫グロブリンという抗体がつくられます。
この抗体にはIgA、D、M、E、Gの五種類がありますが、これらは目的に応じて担当するものが異なります。
IgAは局所免疫のところで述べたように分泌液中に多く分泌され細菌による感染が起こらないようにするものです。IgMは異物にくっついたり補体を活性化する働きを持っています。
IgEはマスト細胞(肥満細胞)にくっつく抗体です。このマスト細胞はアレルギーをもたらす原因となる細胞です。いろいろな抗原刺激によってマスト細胞の細胞膜が破壊されると、ケミカルメディエーターという物質がばらまかれ、かゆみや発疹などが現われてくるのです。
通常の人にはIgEはごくわずかしか存在しませんが、アレルギー体質の人には多量に存在します。