「T細胞」の分化とエピゲノム
国際ヒトエピゲノムコンソ-シアム日本チーム「アレルギー疾患・自己免疫疾患とエピゲノム」 より
自己免疫疾患、アレルギー疾患の患者さんのリンパ球では、多くの場合、「ヘルパーT細胞」に何らかの異常がおきている。ヘルパーT細胞は、ほかの免疫担当細胞に指令を与え、抗体の産出や殺菌作用などを作動させる、免疫の司令塔。何百万もの異なる種類の抗原を、個々のヘルパーT細胞が1種類ずつ分担して記憶でき、あらゆる免疫応答に備える。
ヘルパーT細胞は、そのもととなる細胞(前駆細胞)が骨髄で誕生した後、心臓の上にある胸腺に移動して、「ナイーブT細胞(Th0細胞)」という役割の決まらない状態のT細胞として生まれる。
胸腺を出たナイーブT細胞は身体の隅々の末梢のリンパ組織を循環しており、抗原の刺激を受けると、抗原の種類や環境に応じて役割の決まったエフェクターT細胞(Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞、制御性T細胞)へと分化。
身体中をまわっているナイーブT細胞が、いつ、どこで、どのタイプのエフェクターT細胞に分化するかは、とても重要。
たとえば、Th1細胞やTh17細胞というエフェクターT細胞がつくられすぎると、自己組織への攻撃が過剰になり関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患が起こる。
また、Th2細胞がつくられすぎると、外部からの異物に対する攻撃が過剰になりアレルギー疾患が起こりやすくなる。