アイデンテイテイの諸レベル
ケン・ウィルバー「無境界・自己成長のセラピー論」平河出版社より
☟
アイデンテイテイの諸レベルでは、アイデンティティのおもなレベルをある種の秩序ある形に配置してみよう。このスペクトル状の配置は、われわれが取り上げてきた自己/非自己の境界線とアイデンティティのおもなレベルを示した図1に表されている。
個々のレベルは境界を設ける「場所」によって決定される。スペクトルの底辺、すなわちわれわれがトランスパーソナルと呼ぶ領域に向かうにしたがって、境界線が点線になり、統一意識のレベルでは完全になくなっていることにお気づきであろう。究極のレベルでは、自己と非自己が「一つの調和した全体」になるからである。
スペクトルの個々のレベルの進展が、個人の「自己」感覚、真のアイデンティティ、「あなたは誰か?」という質問に対する答えの制限または限定の仕方を表しているのは明らかであろう。
スペクトルの底辺では、自分が宇宙と一体であり、真の自己は自らの有機体だけではなく、宇宙全体であると感じている。スペクトルのつぎのレベルでは(あるいはスペクトルを「上昇する」と)、全体と一体ではなく、自らの有機体と一体であると感じる。アイデンティティ感覚が全体としての宇宙から、宇宙の一局面である自らの有機体へと移行し、せばめられたのである。
つぎのレベルでは、ふたたびアイデンティテイがせばめられる。自らの有機体全体の一局面にすぎない頭や自我に、おもなアイデンティティをもつからである。
そして、スペクトルの最後のレベルではさらに限定され、影すなわち魂の好ましくない側面を疎外、抑圧し、心の特定の側面、われわれが仮面と呼ぶ魂の一部だけにアイデンティティをもつようになる。
宇宙から有機体と呼ばれる宇宙の一局面へ、有機体から「自我」と呼ばれる有機体の一局面へ、自我から「仮面」と呼ばれる自我の一局面へ――これが意識のスペクトルのおもな帯域である。
スペクトルのレベルが順次展開していくにつれ、「自己」の外に存在する宇宙の局面がますます増えてくる。有機体全体のレベルでは、環境が自己の境界の外側に存在する外的で異質な非自己に見える。
ところが仮面のレベルになると、環境に加えて、からだと魂の諸側面が外的で異質な非自己に見えてくる。