内向的感情型の無意識

<C・G・ユング著「タイプ論」みすず書房より>

 

内向的感情型は、冷ややかで控えめに見えるため、表面的な印象では感情が乏しいように誤解される。彼(彼女)の感情は外に向かうのではなく、内奥に向かって発達するのである。

 

外向的な同情心は、言葉や行為によって表現され、対象によって解放される。内に向かう同情は表現の道を塞がれているが、その人の中では満々と湛える情熱となり、世界中の不幸を一身に背負った形でピン留めされる。時には同情が外にあふれ出て、人々を唖然とさせるような英雄的行為に導くこともあるが、その英雄的行為に対して客体もその人自身もどのように関わればよいのか分からない

 

そのため外向型の<主観的な態度の乏しい見方>で見ると、このような同情は冷淡なものに見えてしまう。というのは、このような同情は目に見えることは何もしないし、外向型の判断は目に見えない力など信じることが出来ないからである。

こうした誤解はこのタイプの人の人生に特徴的な出来事であり、彼(彼女)の胸の内に<客体とより深い感情関係を持つことを戒める>重要な証拠として刻み込まれる

ただしこうした感情の真の対象が何であるかは、このタイプの健全な人にとっても漠然としたものでしかない。このために、自らの目的を世間に表す際には、世俗的な見方から慎重に隠された宗教的な形をとったり、世間を驚かさないように詩的形式で個人的に表現する

それと同時に彼(彼女)の心には<客体に対して優越できるのではないかという秘かな野心>が隠されている場合もある。そのため、このタイプの子どもをもつ母親(父親)は無意識のうちに自らの情念を子供に吹き込むために、こうした野心が子どもに注ぎ込まれることになる。

正常なタイプにおいては、秘かに抱いている感情をあからさまに客体より上に置こうとか、無理やり押しつけようとかする傾向を本気で追求しようとして、厄介な問題を引き起こすというようなことはほとんどない。しかし、

やはりその中の幾分かは滲み出してきて、しばしば定義しがたい・相手を支配するような・影響力をふるうという形で、客体に個人的な作用を及ぼす。この影響力は押しつぶされるような感情窒息させられるような感情として感じ取られ、周囲を呪縛する。こうなるとこのタイプはある種の神秘的な力を獲得し、中でも外向的な男性を強く惹きつける。というのは、この力が彼の無意識を揺り動かすからである。

正常な思考力が無意識的な主体を高いもの、自我はそれより下に位置するものと感じ、感情は自我よりも高く強力なものと感じている場合、このタイプは正常である。このタイプの無意識的な思考(感情が優位なので思考が抑圧されている)は太古的ではあるが、自我を主体に祭り上げようとする衝動を減圧して補償する力を持つ。ところがこの減圧装置としての思考を完全に抑圧してしまうと、無意識的な思考が自我に対して反旗を翻す

このようにして自己中心的になった主体は、見下していた客体の威力や重大さを思い知らされることになる。意識が「他人の考えていること」を感じ始めるのである。この場合の「他人の考えていること」はあらゆる卑劣な行為や悪だくみであり、真実であるかどうかは問題にならない。主導権を奪い返すために、予防のための陰謀を巡らし、他人を疑って盗み聞きをし、できるだけ情報を集めて判断しようとする。主体はますます、たくさんの噂に襲いかかられ、何とか優勢に転じようとして全力を振り絞る。

目に見えない確執は果てしなく続き、熾烈な戦いに勝つために、悪質で卑劣な手段を用い、場合によっては美徳でさえも悪用される。ここまでくると主体は消耗しきってしまうのでので、神経症としてはヒステリーよりも神経衰弱が多く、貧血に伴うような身体症状が強く現れる。

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